森の美術館

私が森の美術館でやりたいこと

いとぐち(株)のブログですが田中個人として、会社として取り組んでいることを書き残しておきます。

いとぐち株式会社の指針に「社会問題の解決に関わる」というものを挙げているので、それを果たすために私は事務所のすぐ横に広がる大きな松林の保全活動に参加しています。

その兼ね合いで11/12、13の2日間 福岡県福岡市東区にある「海の中道海浜公園」にて開催された玄界灘松原ミーティング2022において「宮司地域郷づくり」(自治会)として、松林保全活動について発表させていただきました。

玄界灘松原ミーティング2022

はじめての発表会

この催しは、玄界灘に面した松林の保全活動団体が一同に集まり、それぞれの団体の取り組みを発表して、情報の共有や交流を図るというものです。

その中で私の発表内容は福岡県福津市宮司浜で開催させていただいている「森の美術館」について発表させていただきました。※森の美術館の説明についてはホームページをご覧ください。

他団体の発表内容は防風林・防砂林である松林の保全方法(松の植樹や間伐、マツクイムシ被害に対する考え方)について専門性の高い内容だったので、私が発表するアートイベントの内容はかなり場違いではないかと発表前に不安になりました。

唯一、その不安をかき消してくれたのは会場内に自治会の大先輩方が応援にお越しいただいたことと、知人の徳島大学の朝波さんと長谷川くんがいてくれたことでした。

このお二方とは、このようなフォーラムで一緒になる事が多く、以前から仲良くしていただいています。

そして、発表内容の森の美術館は2018年より開催してきたのですが、いざこれまでの取り組みを25分間の持ち時間で発表するとなると、意外と難しく今回の発表の機会をいただけたおかげで、これまでの「森の美術館」と「森の芸術祭」を整理することができました。

6団体が発表するなかで4番目に私の発表の順番が回ってきました。

序盤は緊張していました

私は普段の生活において人前で話す機会はあまりないので緊張したものの、ほぼ時間どおりに発表が終わりホッと、したのもつかの間でした。

「そのアートイベントは入場無料、参加費無料、販売はしないというルールのもとで、運営経費はどのように賄われているのですか?」

会場から耳の痛い質問が発せられました。

これは以前から森の美術館の大きな課題だと感じていたところなので、痛いところを突かれたなーと思いました。

2018年より開催してきた森の美術館は実は無収入で、今まで歴代の主催者が手出しで開催してきました。

私はこのやり方では継続性が見出せないことから2019年に主催者の収入を作るために作品販売もOKにしたマルシェ「森の芸術祭」を開催しました。

森の芸術祭2019

この「森の芸術祭」ではなんとか黒字で終わることができました。

しかし、昨年春と今年開催した森の美術館では、やはり収入がないために主催者の自己負担でした。

なんのためにやっているの?

おそらく、この内容を見た人はこの人は何のためにやっているのだろう?と思われると思います。

人づてに聞こえてくる話でも、あの人はいったい何をやりたいのだろう?議員選挙にでも立候補するつもりでは?という噂話が本人の私にも聞こえてきます。

前置きが長くなりましたが、私が森の美術館や松原保全を何のためにやっているのか?

それは、

 

1:福津市でワクワクを創ること。

2:そのワクワクを通じて子どもたちの原体験をたくさん創ること。

 

この2つです。

一生暮らす地域を楽しくしたい

私が住む福津市でずっと暮らしていこうと考えた時に、このまちを楽しい場所にしていきたいと考えました。

暮らしていて楽しいまちとは、どんなまちだろうと考えた時に、いくつか浮かんだのですが、これから少子化と人口減少が進むなかで「過疎化していない」ことはいろんな面において大切な要素だと思うのです。

それで、過疎化させないためには福津市で育った子どもが進学や就職で一旦は市外に出ても、いずれは結婚を機に地元に戻りたくなる「さとづくり」が必要なのではないかと考えました。

では、どんなまちだったら故郷に帰りたくなるのか?を考えた時に重要だと思う要素は

親がそのまちで楽しそうに暮らしていること

幼い時に原体験となるような経験をすること

この2つの要素を松林で提供できないだろうかと考えていました。

なぜ松林にこだわるのか?

なぜ私が松林にこだわるのかですが、それは実家が植木生産と造園業を経営していて、子供の頃から家業を手伝って育ちました。

私の原体験はここで形成されたと思います。

そのような経緯もあり、大人になっても樹に関わりたい気持ちはずっと残っていました。

なので、松林保全のボランティアが募集されているのを知ってすぐに参加しました。

そして保全作業に参加すると、自分の両親と変わらないくらいの世代の方々だけで、せっせと落ち葉を運んでいました。

このままだと、松葉が降ってくるペースに対して松葉を松林の外に掻き出すペースが間に合わんなと感じました。

誰からも相談を受けたり頼まれてもいないのに勝手に由由しき問題だと感じて、松原保全に参加していただける方を増やせないだろうかと考えるようになりました。

また、年齢層もほぼ高齢者に偏っていたので、なんとか年齢層をバランス良くできないだろうかと考えるようになりました。

そのような理由で松林に若い人にも足を運んでいただくために松林でなにか楽しい事をしたいと考えるようになりました。

このような理由で松林にこだわっています。

大人が楽しそうにしているのはどんな時?

話は戻りますが、大人たちが楽しそうにしている光景とはなんだろうと考えると真っ先に浮かんだのは山笠でした。

福津市にも津屋崎祇園山笠という神事があります。

私も3年ほど参加させていただきましたが、この山笠の期間は津屋崎界隈の男衆は楽しそうにしています。

しかし、山笠では楽しそうにしている層が一部に限られているので、もっと他に楽しい事はないだろうかと様々なイベントや行事に参加したり運営のお手伝いさせていただきました。

そんななかでたどり着いたのが、福津市の音楽散歩手づくり市でした。

どちらも市民による手づくりのイベントで派手さは無いものの、10年以上続いている温かな楽しいイベントです。このイベントでは実行委員に参加させていただき、沢山のことを学ばせていただきました。温かい眼差しで見守って下さった実行委員の皆さんには感謝しかありません。

上記のような様々なイベントや活動に参加して学ばせていただいところで2018年に森の美術館に出会いました。

この時は私がやりたかった事と森の美術館が一致していたので、すぐに開催させていたただきました。

そして偶然にも2018年は開催日の前日にすぐお隣の松林で「八百万芸能祭」が開催されました。

この時、はじめて八百万芸能祭の人たちと知り合ったのですが、同じ松林を会場にしてイベント主催する者同士、すぐに仲良くなりました。

この時、彼ら彼女らが個性的すぎて八百万という名称のためか、まるで七福神のように見えていました。笑

同じ松林で前日に「八百万芸能際」が開催され、翌日に「森の美術館」が開催されました。

誰かが、この奇跡の2日間をまるで動と静、陽と陰だと表現してくれていたのを覚えています。

森の美術館は自由

話は森の美術館に戻りますが、このイベントは禁止事項が少なく自由です。そのゆるやかさが面白くて楽しいと参加いただく作家さんにも好評なのですが、一応ルールもあります。

それは、

展示作品をその場で販売してはならない。

演奏はアンプやスピーカーは使わずに生の音を楽しむ。

の2つです。

この2つのルールには大切な意味合いが含まれているのですが、その当時私はその意味を理解できていませんでした。

なぜなら、作品販売を禁止したら参加する作家が可哀相じゃないか!

そして、音楽はアンプ使わないとたくさんの人に届かないじゃないか!

と思っていたからです。

そのような理由で翌年の2019年は森の美術館から「森の芸術祭」と名称変更してマルシェ形式のアートイベントを開催させていただきました。

開催エリアも宮司の松林だけでなく、お隣の津屋崎地域郷づくり推進協議会にもご協力いただき開催地をかなり拡大すると同時に実行委員のボランティアメンバーもたくさんの方に協力をお願いして開催させていただきました。

その甲斐あって、当日は前年の森の美術館とは比較にならないほどたくさんの方にご来場いただきましたので、イベント自体は大成功でした。

「森の芸術祭」は成功したものの・・・

はじめてマルシェ形式での開催となり企画を意気込みすぎてしまい、開催エリアも広げすぎてしまい、実行委員は準備に追われ、当日はイベントを楽しむ余裕もなく疲弊させてしまったために実行委員は大幅に減少してしまいました。

この時、イベント規模を一気に拡大するのはとても難しいと反省しました。

この時に私が森の美術館で大切にしている2つのルールをきちんと理解できていたなら、実行委員を疲弊させずに済んだのではないかと思います。

ちなみに、音楽演奏はアンプを使わずに生音を楽しむというルールについては森和田さんのブログで丁寧にその理由が説明されています。

そして、翌年の2020年はコロナで開催見送りました。

その後は、

  • 2021年は春には再び森の美術館を開催
  • 2021年秋には福岡市東区にある海の中道海浜公園内で「森の美術館」を開催
  • 2022年秋 森の美術館を開催
2021年秋 海の中道海浜公園で開催 まちがい探しポスター
森の美術館2022
森の美術館2022

今年(2022年)の森の美術館では過去最多のアンケート回答数(120枚)をいただき、感想も満足度の高いものばかりでした。感想を一部を抜粋させていただきます。詳しい感想は森の美術館ホームページをご覧ください。

こんな素敵なイベントのある福津市に引っ越してきてよかった。

大自然の中での美術館に音楽など色んな方の作品を見て回り ステキな空間で心も落ち着き気持ちよく今日1日が過ごせます。ありがとうございました。出されてある。皆様、お疲れ様でした。

開催場所が松の森で自然と創作の融合が良いです。
子供達も楽しんでいました。
不思議な世界で癒されました。
また開催して欲しいです。

不思議な素敵な世界観でした。癒されました。良いものを見たので自身の感覚も広がりました。

このように来場者からは高い評価をいただいたものの、相変わらず森の美術館は主催者で費用負担するスタイルは変わっていませんので、今後のことを考えるとやはり運営方法を変えていかなければなりません。
2022/11/17追記:
実行委員会で今後の運営方針について話し合った結果、原点に戻って運営経費をかけずに自分たちのできる範囲内で運営していくことになりました。

応援してくださる方も

このように課題は山積みではあるものの、私がやりたいことである「ワクワク」を創り出していくことを、感じ取ってくださっている方もいらして、励みのお言葉をいただきました。

ご本人の許可を得てメッセージの一部を紹介させていただきます。

「森の芸術祭、大好きなんです❣️

住んでいる土地で行われる事、その中で芸術に触れる事、自然を感じること、芸術家さんたちの魂を感じること、たくさんの方々と共有したいです❣️

田中さんのされる事、されている事にものすごく惹かれます❁

この土地に住んでいる方に、

この土地の素敵な場所、素敵な方々、素敵な物事を、

知っている方にはもっと深く、

はじめての方は最初の感動を味わって欲しい✨

私は津屋崎に引っ越してきて良かったと心の底から思っています🌱

いつもわくわくをありがとうございます😊」

嬉しくて思わず涙が込み上げてきました。

しかも、この言葉を送ってくださった方は日々の暮らしをとても丁寧に過ごしておられる方で私が尊敬する方でもあります。

森の美術館を運営しているなかで、時には心無い言葉を浴びせられたり、葛藤や苦悩と喜びが交互にやってきますが楽しみながら続けています。

やっていることは林業と同じ!?

『玄界灘松原ミーティング2022』の事例発表会の終了後に徳島大の朝波さんと長谷川くんと3人で談笑していた時に気づかせていただいたのですが、いま私が取り組んでいる森の美術館と森の芸術祭を通じてやろうとしていることは林業の世界と同じでした。

山で植林された苗木が成長して木材として市場に流通して価値が発生するのは植林から約35〜50年後です。苗木を植えた人はその木が伐採される頃にはこの世にいないかもしれませんが、次世代のため今の収入には結びつかなくても植林を続けていきます。

同じように私が幼い子どもさん方に原体験の機会を作っても、その子どもたちが大人になって活躍する頃には私はこの世にいるかどうかわかりません。

ですが、それでも今のうちに次世代に対してやれる事をコツコツとやっておく事が大人の役割ではないかと思います。

長くなりましたが最後まで読んでいただきありがとうございました。

最後に貴重な発表の機会を与えていただいた海の中道海浜公園の皆さん、ありがとうございました。

そして、通常業務が忙しいなかで森の美術館の準備からポスターやチラシの配布、当日スタッフ、後片付け、アンケート集計、お礼状の作成、HPやSNSの更新などに真正面から向き合い、誠実に対応してくれる「いとぐち」のスタッフには感謝しかありません。いつもありがとうございます。

森の美術館/森の芸術祭 実行委員長 田中利宏

2019年 森の芸術祭 自然のなかでブランコを楽しむ男の子

投稿者プロフィール

たなか としひろ
たなか としひろ
1972年生まれ。福岡県出身

子供の頃から小心者なのに険しい道を好んで歩いて、普通の道をまっすぐ歩けることがいかに幸せなことなのかを噛み締めるという変わった子供でした。
食への関心がきっかけで冬は猟師もしています。

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